金冠製作のための小物類
ここで紹介する道具類は現在は使用されていないものの、歯科技工の歴史の一端を担ってきたものであることを
皆様に知っていただきたい。

昭和10~20年代の技工台と小道具


石膏のこぎり
当初は、歯科技工士自らがロール(圧延機)で伸ばした銅板にヤスリでノコ刃を付与して製作していた。時代が進むと「石膏分離鋸」などの名で既製品として発売されるようになった。

ヤスリ台(ベンチ・ブロック)
ヤスリを使用する際に支えの台として使用する。鉄枠にゴムがはめ込んであり、これを技工台にネジで取り付ける。使い勝手を良くするために写真手前のヤスリには木の柄が取り付けてある。

金属バサミ
ハサミには直と曲げの2種類がある。金属板から外形を切り出す際には直を用いて、彎曲している辺縁を切り出すなど細かい作業時には曲を用いた。


鉗子類
特殊な整溝鉗子(メロットメタルを用いて金属板を打ち出し、金冠の咬合面を圧印した後、咬合面の凹部の裂溝、小窩を整溝鉗子で形成する。)

開面鉗子
前歯金冠を窓状に開く工程で、最初に穴をあける際に用いる。その穴に曲の金属バサミの刃を入れて窓状に切り、形を整える。


スタンド型鉄砧(圧印用鉄床)
金冠や圧印床の打ち出しに用いられた


Cハンマー・豆槌

メロットメタルとメロット鍋
メロットメタルとは、G.W.Mellotte氏が発明した易熔合金で、金冠の咬合面を打ち出すための型用として用いる。メタルの溶融には専門のメロット鍋を使用する。

卓上の鉄砧
金冠の打ち出しや圧接、金属板の伸展などに使用していた

デンチメーターとビンディングワイヤー
歯牙の測周時に用いる。デンチメーターにビンディングワイヤーを通して歯牙の周囲よりわづかに大きい環を作り、これを歯牙にはめてマージン部の測囲をおこなう。



無縫冠調整器
凸部と凹部のアタッチメントがサイズ別に複数あり、必要な大きさの杵を選択して金属板を圧接し、キャップを製作する。当時の歯科技工士たちは「搾り器」と呼んでいた。


鉄製円板(ワイヤーゲージ)
周囲にある穴型の切れ込みに金属板または金属線を差し込みその厚さを測る。


バンド冠を製作する道具

無縫冠を製作する道具