エンジン
足踏みエンジン(歯科用施盤車)
足踏みエンジンは裁縫用ミシンと同様,勢車という大きな車輪と踏板で構成されている。勢車と主要部のハンドピースはベルトで連結されており,勢車が回転するとハンドピースも回転する仕組みである。
また,ケーブル式とベルト式の2種類があり,前者は勢車と上部滑車とがベルトで連結され,上部滑車からハンドピースまでケーブルになっており,滑車が回転するとハンドピースも回転する。後者は,勢車からハンドピースにいたるまで,すべてがベルトで連結されている。わが国では,1895年頃に初の国産化に成功していたようである。
電気エンジン
大正時代に入ると電気エンジンへの移行が始まった。ただ,足踏みエンジンは国産品が普及していたものの,
電気エンジンはいまだアメリカのリター社やS.S.ホワイト社などからの輸入に頼っており,技術を持たない卸売業者たちはその修理に閉口していたという。
そのような中,1919年に島田辰次郎(1880〜1953)がリター社のものに似せた電気エンジンを製作した。 これがわが国における電気エンジンの始まりとされている。辰次郎は,清水卯三郎が経営する瑞穂屋工場の下請工場で働いていたが,その後はすぐに独立することなく夜間の工業学校に入学し,電気を学んだ。ここでの勉学を活かして製作された電気エンジンは,電気時代の到来を見越した先見性の賜物と言えるであろう。

ケーブル式の足踏みエンジン

昭和23年頃まで使われていた。
歯科器械の電化時代を拓いたブラケット式電動エンジン『サクセス』

本製品(長田電機製作所製、回転数7000rpm)は壁や柱にも取り付けることができ、便利であった。
昭和10年頃になると高性能の国産電機エンジンが製作され、輸入製品を追いやる程の最盛期を迎えた。
正逆回転が可能な電機エンジン

アルミ製バースタンド(左)と硝子カバー付きの回転バースタンド(右)1927年頃